沖縄へ引率でツアーに行った時の話。
その日は最終日、ケラマでのボートダイビング。
あいにくのコンディションで、波・うねりがあり船上
では酔うくらい。
しかしながら海の中はそれなりに穏やかで、ダイ
ビングをするのに影響はなかった。
が、どうも現地のガイドが落ち着きがなく、あっち
やこっちと、後続を気にするでなく移動を繰り返す。
とくに何があるわけでもないのに、振り回される側
はたまったもんじゃない。
そうこうしているうちに、仲間の一人がエアの残圧
が少ないと合図を送ってきた。
近づいて確認してみると、確かに50を切りレッドゾ
ーンに入っていた。 
自分のを確認すると、80を切りブリージングする
にはEXポイントとの関係を逆算したいところ。
が、知らぬポイントでもあり、ガイドに判断を任せる
のがベストと思い、最後方から先頭をスイスイ進む
ガイドに向かい、仲間のタンクを持ち引っ張り始めた。
そんなことを知らないガイドは相変わらずグングンと
先を進む。 あともう少しで追いつくと思った瞬間、突
然BCにエアが入り込み、急激に体が締め付けられ
た。 一体何が起きたのか理解できず、手でパージ
ボタンを探ってみると人の手に触れた。 ハッとして
慌てて見てみると、仲間が俺のAIR2を勝手に吸い、
しっかり両手で握りこんでいたのだ。 ボタンに気づ
いていないようでガンガンとエアを入れてくる。
当然、そのあおりで二人の体がふわっと浮き始めた。
確か14mの水深だったはずだが、急浮上すれば体
に影響が出る可能性も大いにある。
必死にサインを出し、手を離すよう指示するも相手は
更に力をこめてくる。 さすがに異変に気づいたのか、
ガイドが浮上していく我々を見上げた。
しかし、彼は笑っていた。じっと見つめて大量の泡を
吐き出していた。
締め付けで呼吸困難になりながら浮上を続け、ホー
スを外そうとチャレンジするも上手くいかず、次第に
EXポイントに迎えにくることになっているボートの影
に怯えた。 もはや海面への到着は避けられない。
回りを見回し、耳を立て、祈ることしかできない。
結果、スクリューにミンチにされることもなく無事に
顔を出すことができ、すぐに言葉で説明し浮力を確
保してあげてフリーになることができた。
よくイントラと客が急浮上してスクリューにやられて
死亡するニュースを見るが、なるほどこういう事案も
あるのだと思い、急激に恐怖が襲ってきた。
そして、すぐに他の仲間達もエア切れを起こし自主
的に浮上してきた。
ボートが来るまでの波に揺られ、平衡感覚も弱まり
帰りのボートではぐったりしてしまった。
当然、仲間にはルールの遵守を注意し、ガイドにも
責任感を持つよう忠告したが、そのガイドは「二人が
遊んでるのかと思った」と言いのけやがった。
幸い減圧病にもならずに、夜は酒盛りが出来たもの
の、俺の胸の中に深く深く刻まれた恐怖体験となった。
ある女友達が「死ぬ寸前に人生の走馬灯を見るか、
マンタを見るかはその人の運」と言っていた。
海で死ぬのは本望だが、恐怖を感じて逝くのは遠慮
したいところ。
今年も安全で楽しいダイビングが出来るよう心に誓う
今日この頃。。


「ロッキー・ザ・ファイナル」☆☆☆
「インビジブル 2」☆☆
「間宮兄弟」☆☆☆
「隠された記憶」☆☆☆