ある同期のインストラクターが、とあるリゾートで
働いていて、目を輝かせながらこう言った。
「絶対、水深100mを超えますよ♪」
未だ50mすら突破していない俺にとって、そん
な壮大な挑戦は無謀に思えてならなかった。
でも、確かに彼はその前日に70mを突破してい
た。 
そこまでの水深になるると、視野はタバコ1箱分、
動作は通常1秒のところ3秒くらいかかるそうだ。
どうしてそこまで危険を冒して挑戦するのかと聞
くと、「その世界がどんなものなのか自分の目で
確かめたいんです♪」とのこと。
彼はダイビングの向こう側を手に入れたいようだ。
OW講習で初めて海に潜り、初めてのダイバー
ズ・ハイを経験し、初めてマンタを見て新たなダイ
バーズ・ハイに陶酔した。 しかし、確かに本数を
重ねていくと中毒のようにもっと強烈なものを欲す
るものだ。 そして、気がつけば死と隣り合わせの
ルール違反や、陸の上の河童になってしまうのだ。
彼の挑戦は規準とは言えず、推奨することはでき
ないが、そこまでの勇気や冒険心を羨ましくも思う。

また、ある先輩インストラクターは、必ず自分だけ
数メートル上にいる。 表面上はチーム全体を監
視しているようだが、なんてことはない、実はエア
減りにコンプレックスがあって、少なくとも自分か
らエア切れにならない防衛策なのだ。
確かに深く潜ればいいというものではないけれど、
ガイドからすれば視界から外れるので気を遣う。
俺はどちらかといえば、あまり泳ぎたくない派な
ので、やや深い根待ちやドロップオフでクリフハン
ガーごっこが好きだ。
高所恐怖症なので、あまりに水底深くが見えると
ウエットの中で脂汗をかいてるのがわかる。
そんな俺のダイバーズ・ハイはいったいどこにあ
るのか、いったいどこでダイビングの向こう側を
手に入れられるのか。
昔ある女友達が「冬は女がスキーで美女に化け
る、夏は男が海で野獣に化ける、KAZU君も♪」
と言っていた。
いやいや、俺はビキニの美女が手招きをしても、
タンクを背負ったら迷わず海へ入る! はず。
今年こそ、少しでもダイバーズ・ハイに酔いたい
と思う今日この頃。。


「バッシング」☆☆☆☆
「ウルトラヴァイオレット」☆☆☆